カフェ・コンディトライの誘惑
2014年03月12日 更新▲「カフェ・コンディトライ」というものをご存知だろうか。これはウィーンを訪れたら誰もが一度は目にする「喫茶店+菓子店」のことである。厳密にいうと、単なるカフェではない。
カフェ・コンディトライには、菓子に並々ならぬこだわりがある。名物「ザッハ・トルテ」はもとより、柔らかいクリームを挟んだ「クリームシュニッテ」やシューにチーズと生クリームが入った「トプフェンゴラチェ」など、ウィーンを代表する数々のスイーツが、カフェごとに独自性を主張しながら提供されている。中には名店「ザッハー」と「デーメル」のように、「ザッハートルテ」という名称のオリジナル権を巡って、裁判にまでなった例もある。
写真は、カフェ・コンディトライの中でも老舗中の老舗といわれる「ゲルストナー」(1847年創業)。この店のこだわりも、やはりザッハ・トルテである。「ゲルストナー・トルテ」と呼ばれるそれは、極端な甘味を嫌う日本人の繊細さに合う、上品な味わいが特長である。
菓子店だけではない。音楽ホールや書店など、カフェ文化の薫るウィーンにおいては「お茶をすること」が暮らしのあらゆる場面に同居している。人々が集い、論じ、同じ時を憩うことを「誘う街」なのである。
だから、ウィーンの街を知るには、先ずカフェなのだ。カフェの中に街があるといわれるくらい、この街はそのチャンスに溢れている。減量中の身でも、森に迷い込む気分でコンディトライの扉を開けてみよう。それが、ウィーンを旅するということである。