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特集:イギリス

2012年06月18日 更新▲



DSC_4844 / Daniel Erkstam

僕のおもちゃ箱には、チェス駒があった。
親父がどういうつもりで、そこに入れたのかは
結局わからないままだったが
その後の人生で、僕が損をしなかったことは確かだ。
僕はミルク色の駒を善人と呼び
漆黒の駒を悪の軍団に見立てて遊んだ。
ロンドンの寄宿舎時代に初めてルールを覚え
しばらくは目を血走らせて朝を迎えた。
勝手に作り上げた駒のイメージが邪魔をすることもあるが
案外それも、相手を惑わす格好の戦略となった。
盤に向かうとき、親父を想う。
瞼の奥には、穏やかなミルク色がちらつく。

 
 
Titanic was built here / coda Sheep – 3 / A Roger Davies
DSC_1337 / yoppy Bearskin or Gherkin? / dullhunk

今夏のオリンピックで、各国のトップアスリート達が集う、イギリス。今年は、エリザベス女王即位60周年の祝賀ムードも加わって、世界中の注目を浴びているといっていい。しかし、いくら関心が高まったとしても、この国の正式名称を即座に答えられる者は少ない。そして、かつては4つの別国であったことを意識する機会も、殆ど無い。

イギリスは、16世紀以降に「イングランド」が「ウェールズ」「スコットランド」「北アイルランド」を併合して生まれた連合王国だ。あのビートルズを生んだイングランド、牧畜風景が広がるウェールズ、スコッチウイスキーのスコットランド、タイタニック号を造った北アイルランド。どの地を訪れても、そこには到底ひとことでは語り尽くせないストーリーがあふれている。それゆえに、併合の陰には母国の言語や宗教を必死で守ろうとしてきた、各国の苦悩もまた見え隠れする。

今回のオリンピックで、イギリスは52年ぶりに4国合同のサッカー代表チームを結成する。競技の行方はもちろんのこと、彼らがどんな思いで一枚のユニオンジャックを掲げるのか、その表情から目を離せない夏になりそうだ。

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