特集:オランダ王国
2012年05月23日 更新▲ Kingdom of the Netherlands
Traditional-Windmills-Holland / Bogdan Migulski
本当に妙なもので、同じクラスに居たかさえ定かでない奴でも
異国の地で会うと途端に懐かしく、親しかった気分にさせる。
目の前の彼も、まさに同じことを思っているようで
今にも喋り出しそうな口元で、僕に近づいてくる。
「よう。」 「ああ。」
お互い呼び合う名前を思い出せずに、短い言葉を交わす。
違う誰かの名で呼ばれる虚しさを回避できただけでも、僕等は幸せだった。
むしろ長閑な風景の中で、多くを語るのはナンセンスに思えた。
しかし、名前が出てこない。
僕等は校庭の隅で蓑虫を集めていた頃と同じように
いたずらっ子の眼差しで、それぞれに風車を眺めている。
Van Gogh / HerryLawford Bierspeciaal Café De Paas / Fabio Bruna
holland klassiker / jot.punkt Amsterdam For a Day, PG Version / Megan Mallen
「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」といわれるように、オランダを語るうえで「干拓」の歴史は切り離せない。
国土の4分の1が海抜0m以下という地理的条件により、常に洪水と向き合ってきたオランダ。この生死にかかわる経験は、結果的にオランダを「創意工夫の国」として発展させた。苦労の賜物である堤防や護岸工事の技術は今や世界中で活かされており、干拓事業を通じて生まれた住民間の協力・対話の精神も、オランダ流の政治経済の基盤になっているといわれる。
日本にとっては、400年前にオランダ船が漂着してからずっと、親交を深めてきたパートナー。「ビール」や「ランドセル」という言葉がこの国からやってきたことを考えると、故郷のような懐かしさを覚える人も少なくないだろう。
オランダを訪れ、鮮やかなチューリップ畑や偉大な画家ゴッホの作品に目を細めるとき、この国の地道さを記憶のどこかに留めておけたなら、更に豊かな旅路となるに違いない。