特集:ノルウェー
2012年08月03日 更新▲
NORWAY / Michael Gwyther-Jones
読み終えたばかりの短篇を閉じる。
デッキの風は思いのほか強くて、人の姿はまばらだ。
視線を感じて振り向くと、10歳ぐらいの少年だった。
手には僕の帽子。いつの間にか飛ばされたらしい。
僕が手をあげると、少年はホッとした顔で駆け寄ってきた。
「ねぇ、それ面白い?」
情けない男の恋愛話だったが、笑顔で彼に渡す。
フィヨルドの夏。今年は、やけに爽やかな風が吹く。
edvard munch – the scream 1893 / oddsock Viking Ship Geiranger Ffiord Norway / Leshaines123
Open-face sandwiches at cafeteria in Flåm / tuey Bergen, unesco site 01 / dulcimer61
スカンジナビア半島の西側に位置し、氷河の芸術「フィヨルド」と共にある国、ノルウェー。複雑に入り組んだ地形は、この国に穏やかな港と豊かな漁場をもたらした。ノルウェーに疎くても、ノルウェー産のサバに、たっぷりと脂が乗っていることを知る日本人は多い。
フィヨルドは、険しい岩肌を露わにしたかと思えば、なだらかな山並みに懐かしさと安らぎを漂わせる。それは場所ごとに異なる表情を浮かべて、見る者の心にゆっくりと染み入る。北欧のショパンといわれた作曲家グリーグは、のどかなフィヨルドの村に創作小屋を建て、巨匠ムンクは、幻覚で見た夕景のフィヨルドを、あの名画をもって世に吐き出した。
夏には白夜が、冬にはオーロラが空を舞うノルウェー。この絶景の連続に、旅するあなたが歓喜の「叫び」を上げることは、もはや避けようがない。