特集:パリ
2013年11月13日 更新▲
cornice / zoetnet
狭いアパルトマンを住処にして
人生で2度目の学生を始める。
僕はカンバスに向かいながら
ときどきパリの空を眺める。
水曜日には、あの人が通る。
夕刻の君は足早に通り過ぎ
こちらを見上げることはない。
僕は今日もそんな瞬間を待ち
窓辺のアイビーに思いを注ぐ。
1区を中心に、渦巻を描きながら時計回りに20区までが並ぶ街、パリ。
凱旋門やエッフェル塔、そして街角で語り合う恋人達・・・。パリとはそんな印象の街である。海外旅行の始まりが「憧れ」だという人の中には、パリという街の存在が、いかに偉大だったかを力説する人も多い。
オープンカフェで長い脚を組むパリジェンヌは、優雅という言葉の代表選手である。固いパンも、フランスという名が付いた途端に味わい深くなり、ごく少量の料理を円盤のような大皿に乗せたとしても、フレンチの世界で皿の余白を無駄だと批判する者など誰もいない。
それが、世界の美をリードするパリの特権であり、そんな街を多くのファンが望んできた。
しかし、世界各国の魅力的な地を訪れる機会が増えた昨今、パリにシビアな目を向ける旅人も少なくない。治安の悪化やホテル従業員の接客態度など、この街ではホスピタリティへの不満が噴出する傾向にある。麗しき街として持ち上げられてきた末の悪評。なんとも皮肉な話である。
そんな中、フランス観光局や商工会が対策に乗り出した。世界各国からの観光客の国民性に合わせたコミュニケーション方法をマニュアル化し、レストラン等のサービス業従事者に配布しているのだという。果たして日本人は、どう接客されるのであろうか。
次の時代に突入したフランス・パリ。憧れだけではない、更なる魅力を探しに行くときである。