特集:スイス連邦
2013年08月08日 更新▲ Swiss Confederation
Matterhorn_2500-2 / Liga_Eglite
我ながら特等席だ。
僕はポケットの中で握りしめた石を
ゆっくりと取り出す。
病床の友に託されたそれは
僕の汗ばんだ掌から放れて
花の傍に転がる。
僕らは並んで山肌を望んだ。
夢中でシャッターを切る僕の横で
彼は黙って風に吹かれている。
一面に広がる黄色の花が
あの人のワンピースのようだと
彼も思うのだろうか。
Zytglogge Clock Tower, Bern, Swiss / AbhijeetRane Switzerland / Sara Cimino
Kimberly Birthday 2011 / kimberlykv Switzerland / robertpaulyoung
スイスの景色には、山と列車が付きものである。
国土の約7割を山岳地帯が占め、モンテ・ローザやマッターホルン、ユングフラウなど標高4000mを超える名峰が悠然と連なるスイス。国花エーデルワイスをはじめとする高山植物は可憐に野原を染め、颯爽と駆け抜ける列車に手を振るかの如く、風に揺れる。
魅力は山の風景ばかりではない。スイス最大の都市で、金融や交通の要衝として名高いチューリッヒ、多くの国際機関が集結するジュネーブ、アインシュタインが特殊相対性理論の論文を書き、旧市街地が世界遺産にも登録されている首都ベルンなど、街の姿もまたスイスを輝かせる。
スイスでは公用語として、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語という4つの言語が飛び交う。国民の多くが数か国語を話せるという語学堪能な国である一方で、保守的でシャイな一面もある。見知らぬ来訪者に対しては決してフレンドリーとは言い難く、旅行者がコミュニケーションに苦労したという話も少なくない。打ち解ければ非常に親切という性質も含めて、どこか日本人を彷彿とさせる。
時計に代表される卓越した技術力や鉄道ダイヤの正確さもまた、日本人の姿と面白いほどに重なる。スイスの職人が、世界の数ある道具の中から日本の匠が製作した工具を選び、ものづくりに没頭する姿も多くみられる。
「長寿」という点でも日本と共通する国、スイス。長い人生の中で、じっくりと時間をかけて味わいたい国である。
★意外と知らない!海外旅行保険の「リピーター割引」とは?